中学受験は4教科の総合点で合否が決まるため、少しでも合格に近づけるためには苦手教科を克服することが合格するためのカギになります。中でも国語はセンスが必要、生まれつきの才能で得意不得意が決まるというイメージがあり、一度苦手意識を持ってしまった場合には、そもそも国語の偏差値をアップさせることをあきらめがちになってしまいます。
お子さんたちは今まで、真面目に塾に通い小学生とは思えない膨大な演習量をこなしてきたはずです。それなのになかなか国語の成績が上がらないため、どうすればいいか分からないと悩んでしまい、国語に対して苦手意識を持ってしまっていると思いますが、国語の苦手は諦めるしかないのでしょうか。
実は、最初は国語が苦手という受験生ほど、得点源と言える教科になるものです。算数や理科が苦手でも上手く勉強すれば、国語は安定して高得点を取れるようになったという受験生も多いので、この記事では、国語が苦手な子の勉強の仕方に関して解説していきます。
中学受験の国語は苦手を克服できる
中学受験の国語が苦手な受験生はかなりの数いるのではと思います。国語という教科は、勉強法をきちんと把握して、語句や漢字、語彙力がしっかりと頭に入っていれば、偏差値に必ず反映される教科のはずです。
しかし実際には、国語は単純な暗記教科ではないため、点数を取れる子と取れない子の差が激しく、間違った勉強法で苦手意識を持っている受験生も少なくありません。
- 「塾に通わせているのに、どうしても国語の成績が上がらない」
- 「いくら時間をかけても国語の成績が全くあがらない・・・」
- 「国語は伸ばすのに一番時間がかかる教科だ。」
そんな話をよく耳にします。残念ながら、こういった誤解をしている限り、国語は得意になりません。
また、中学受験では、多くの学校で最初の試験は国語が行われます。どうしてもその日のできは最初の教科に左右されるものです。そのため、国語で快調な滑り出しをしたいと考える人は多いでしょう。
しかし、意外と国語は点数が伸び悩んでいたり、試験によって波があったり、苦手を克服できなかったりと悩んでいる生徒や保護者が多いです。国語は生まれ持った才能だから点数を伸ばすことができないとあきらめてしまう人もいますがそのようなことはありません。訓練すれば国語の苦手は克服することが可能です。
そもそも国語読解力が最も重要になってくるのは、6年生で応用問題などのときです。国語が得意になっていくのは、国語のセンスがあるからだとか、応用力が身についたからだと思いがちですが、本当はそうではありません。
4年生、5年生の時に習う基礎的な下積みが正確で、苦手意識をもたないというところから、国語が得意になっていくのです。ですから、まずは絶対に苦手意識をもたないようにして、気合を入れて取り組むようにしましょう。
最近の中学受験の国語の問題傾向
中学受験の国語で点数を伸ばすためには、まずはどのような問題が出題されているのかを把握しましょう。敵がわからなければ攻め方がわかりません。問題の傾向をつかむと自分の弱点がわかるだけでなく、対策の講じ方が見えてきます。
多くの学校では、文章題と知識問題で試験が構成されています。文章題は説明文と物語文の1題ずつ出題されるのが主流で、知識問題は学校によって出題されるものが様々です。中でも文章題は全体的に新たな問題傾向が見られます。
問題量の増加
これは国語だけでなく4教科すべてにおいて言えることですが、近年の入試問題は問題の量が多くなっています。問題の意味を理解しながら正確に解いていくことが求められるので、文章を読みなれておくことはもちろんですが、たくさんの問題に触れて解き方をマスターしておくことが必要です。
多くの学校で、問題を最初から丁寧に解いていくのでは時間が足りない構成になっています。そこで過去問や模試を通してどのように解き進めていけばよいかテクニックを身につけておくようにしましょう。
思考力を問う問題の増加
これは、国語だけでなく理科や社会でもいえることですが、思考力を問う問題が増えています。ただ知識を問うのではなく、知識を使って自分の意見を述べる問題や、文章を読んで自分の考えを述べたりする問題が増えているのです。
このような問題の変化が起きた理由の一つが大学受験の改革や公立中高一貫校の出現があります。特に公立中高一貫校の適性検査型の試験の影響は大きく、適性検査に似た形式の試験を実施している学校や、適性検査を意識した思考力を問う問題を制作している学校も大幅に増加しています。
新傾向の問題への対策
近年の国語の問題は、ただ文章を読んで問題を解くのではなく、グラフや表の読み取りといった強化の垣根を超えた問題が出題されるようになっています。なんと、国語の問題の中で計算問題が出題されたというような学校もあり、落ち着いて取り組めば決して難しくはないのですが、初見で解くとなると動揺してしまうような問題も多いのです。
物語文の問題でも、自由記述で「主人公の立場ならどうするか」といった以前から見られた問題のようなもの以外にも「物語の続きがあるとしたら、どのような話になるか考えて書きなさい」といった問題が出題されていることもあります。このように、試験で出題される問題は事前に学習したことだけを問うものだけではないのです。
対策をしようとしても、当日にならなければどのような問題が出るか誰にも予想はできず、明確な対策ができるものではありません。大切なのは初見の問題にも落ち着いて取り組むことができるよう、十分な知識を身につけておくことと、とりあえず自分なりに書いてみるという挑戦する気持ちを持つことです。塾の授業や模試でも新傾向の問題に遭遇したら、まずは書いてみることを心がけましょう。
なお、中学受験の国語の説明文・論説文・物語文などの出典に関しては、下記のページで50音順、中学校別に整理して掲載しています。こちらを確認して自分の志望校の国語の出典傾向をつかんでみましょう。
中学受験の国語が苦手な理由とやってはいけない勉強方法
国語が苦手な子に共通していえるのが、活字を読みたがらないということです。活字が苦手だからといって、本を渡してどんどんと読ませようとしても読めないですし、より一層苦手意識が強まり逆効果になりかねません。そこで、まずは活字に興味を持ってもらうことを心がけましょう。
活字を読みたがらない、興味を持たないのは読んでも楽しくないことが理由の一つです。読んで文章の背景を知ったり、新たな知識を身につけたりすると、少しずつ活字を通して知ることができる世界に興味関心を持ち、活字への苦手意識が薄らいでいきます。
そこで、興味あるものからで良いので積極的に読書の機会は設けてみましょう。中学受験でよく出る小説や随筆を読ませようとする必要はありません。好きな分野の図鑑や日本の歴史や慣用句の漫画でも良いでしょう。とにかく読書に興味を持ち、活字を読むことが楽しいと感じたり、自発的に続きを読みたいと思ったりしてくれるようになれば国語の苦手を克服するきっかけとなります。
ただし、読書をするだけで国語の力が付くわけではありません。あくまでも国語の入試や普段のテストで出題される問題文に対して抵抗なく読み進められるようになるだけです。ただ読書が好きなだけでは好きなジャンルの文章はしっかり読むけれど、苦手なものは読まないという状態を作る可能性もあります。そこで、読書を勧めることは成績アップの一つのきっかけになることはありますが、ただ読書をさせるということだけで成績が上がるかというと適切とは言えません。
はじめは国語が苦手な子供ほど、得点源になる
今現在国語が苦手ということは、国語のテストで点数を落としているということになります。点数を落としているというとネガティブにとらえがちですが、落としている点数があるということは言い換えると伸びしろがあるということです。
そこで、国語ができない、点数が悪いということで悲観的になるのではなく「今から国語の点数が上がるから成績が上がるチャンスがある!」「国語の点数が伸びたら合格が近づく!」と親子でプラスに考えるようにしましょう。
もちろん、弱点克服に取り組まなければ点数は伸びないままです。しかし、まだ伸びしろがあると思えば苦手なことにも取り組みやすくなりますし、モチベーションアップにもなります。
また、もう少し後にも詳しく書きますが、中学受験の国語の勉強は、大きく分けると次の2つに分かれます。まずひとつめは、暗記分野です。これは、漢字・ことざわ・慣用句・語句・文法について問われます。
基本的に覚えていれば点数の取れる分野なので、説明文や物語文の読解が苦手という子は、先に暗記分野を集中的に対策しましょう。こちらの学習内容に力を入れて、その部分は満点をとれるくらいの精度にしておきましょう。
国語の偏差値をアップさせる問題別の勉強方法
では、具体的に国語の偏差値をアップさせるにはどのような勉強方法が良いのでしょうか。知識分野と読解分野それぞれの勉強方法や、時期に合った勉強方法を紹介していきます。
知識分野
知識分野というのは漢字や慣用句、ことわざといったもので、覚えれば得点力になるものです。とはいえ、中学受験で必要になる知識は膨大にあります。そこで得点源にしていくためには毎日コツコツと覚えていくことが必要です。
なお、漢字やことわざは意味を考えて学んでいくと効果的に暗記することができます。これはどんな分野の学習内容にも応用が利きますが、魚の漢字には全て「魚へん」がつくように、漢字はある程度規則性が存在します。これを念頭に置いてこの漢字はどの系統にあるのか等を把握して覚えれば学習効率を大幅にアップさせることができます。
また、ことわざには何らかのエピソードがあるものが多く、ことわざを勉強する際にはそのエピソードも調べてみると印象に残りやすく難しい言い回しのことわざでもストンと頭に入ってきます。実際に意味を知ることで日常の中でも漢字やことわざを使う事で漢字やことわざを理解し、どんな状況でも自然に思い出すことができます。
塾の漢字テストは特に大切にしよう
塾に通っていて、毎週漢字テストがある場合には毎回のテストを確実に満点取れるように勉強するようにしましょう。満点を取るためにこまめに練習すること、正しく漢字を覚えることが習慣化されるとほかの科目の学習でも暗記が上手くこなせるようになります。一人でできるようになるまでは、家庭で大人が正しく書き取りができているかチェックをしたり、本番前に予備テストをしたりして、満点が取れるようになるためのテスト勉強の方法をアシストすることも有効です。
漢字の勉強の際に「10回ずつ書く」といった指示がされることがありますが、これは正しい勉強方法ではありません。たしかに学年が低いうちは漢字を見るだけで覚えた気になったり、書く宿題を出さないとやろうとしなかったりするため、塾としても宿題として課されることがあります。しかし、これは覚えさせようとするために行っているのではなく、あくまでも机に向かう習慣やテスト勉強の習慣をつけるために行っているものです。
学年が上がっていくにつれて漢字の宿題というのは決まった回数書くことよりも、自分で計画を立ててその通りに勉強し覚えることや、効率よく覚える方法を習得すること、自分の覚えやすいスタイルや覚えるのにどのくらいの勉強が必要なのかを把握することが大切になってきます。
受験勉強をしていくと、多くの場合漢字の宿題は一度書いてある程度覚えられるようになりますが、ほとんどの場合一度では完璧になりません。テストの直前に見直すようにすれば、それだけで格段に満点がとりやすくなります。毎週繰り返していけばテスト勉強にかかる時間も、見直しにかかる時間もどんどんと短くなり、他の科目でもテスト勉強が活きてくるようになるでしょう。
読解分野(説明文や物語文、随筆文)
中学入試で出題される国語の文章題というのはある程度の型があります。そこで型を身につけることが得点力アップにとても大切です。家庭学習だけではどうしても型を身につけることができません。塾の授業をしっかりと聞くこと、家庭学習を通して塾で習ったことを復習することを徹底すると、少しずつ解き方のコツがつかめていきます。
国語の得点というのはすぐに伸びるものではありません。成果が出るまで時間がかかるものなので、あきらめず努力を続けられるよう、家庭でフォローの声掛けをしつつ、応援することも大切です。
小学5年生までのうちにやっておくべきこと
文章を読んでも意味が分からない、ということが理由で読解問題ができない子の場合には語彙力を増やすことが大切です。中学受験の勉強をしていても、まだ時間に余裕のある小学5年生までのうちは、積極的に辞書を引いて言葉を覚える習慣をつけましょう。
中学入試において、当日出題される国語の物語文や説明文はほとんどの生徒にとって初見の問題です。過去に読んだことのある文章が出題されるということはめったにありません。初めて読む文章の中にはどうしても知らない単語が出てくるものです。他の受験生よりも一つでも知らない単語がない状態にしておくだけで、文章の内容が理解しやすく、設問にも答えやすくなります。
記述が苦手な生徒の場合には、辞書で引いた言葉の使用方法を書写するのも有効です。辞書に書いている正しい日本語を読み書きすることで、文章の書き方のパターンを身につけることができますし、書くことへの苦手意識を克服することにも役立ちます。ただし、この方法は作業にも時間がかかるので、小学5年生までの時間に余裕のある時期に限定的に行うようにしましょう。
語彙力を身に付けるのには家庭での会話も重要
国語の文章読解の説明というのは、家庭でしようと思ってもなかなかできるものではありません。しかし、親子での会話での時間は違う目線や価値観の共有ができたり、世代間の違いを知ることができたりして、国語の得点アップに役立つ知識を身につけることができます。直接的な解き方を教えることはできませんが、普段の会話が間接的に国語の問題を解くための背景知識を身につけたり、違う視点から物事を見るきっかけになったりすることがあるのです。
中学受験の国語で出題される物語の多くは大人の視点から文章が書かれていたり、大人の世界のやり取りが出てきたりすることがあります。そのため、文章を読む際には小学生でありながら中学生や大人のような視点で読み解くことができないと、会話されている内容について理解ができません。日常的な親子の会話を通して大人の視点や考え方を知ることで、文章読解の中での心情理解や情景理解に大いに役立つことがあるのです。
また、国語は教養があるほうが有利な場面が多くあります。普段の会話はもちろんのこと、テレビを見ながら親子での会話の中で子どもが知らない知識を伝えることで、文章内に出てくる単語を時間を持つことはストレス解消やリラックス効果になるのはもちろんのこと、机に向かわなくてもできる勉強なので毎日コンスタントに時間を作ることを心がけてみましょう。たくさんの会話をすることで力をつけつつ、親子で同じ方向を向いて受験に向かうことができるようになります。
中学受験の国語を勉強するのにおすすめの問題集・参考書
塾での問題集や過去問を解くことでも国語の力を養うことはできないわけではありません。しかし明確に苦手な分野がある場合や、知識の抜けがある場合には苦手部分に特化した問題集や参考書に取り組んだ方が効率的です。
そこで、国語の受験勉強で役立つおすすめの問題集や参考書を紹介します。今、点数が伸び悩んでいて何か勉強するものを探しているという人はぜひ参考にしてみてください。
また、苦手意識が少なくなってくれば、問題を解く場合は制限時間を設けたり、目新しい問題が出た時に備えて、時間配分、問題を解く順番を決めるなどのテクニックを身につけることも重要なことです。
文章読解の鉄則増補改訂版
受験本に詳しい人には有名なエール出版から販売されている、読解の指南書ともいえるものです。前半部分は文章題の空欄補充や記号問題、記述問題の解き方の鉄則が書かれています。過去問や模試の解き直しの際、辞書のように確認しながら読み進めていくと実践的なスキルをみにつけることができるでしょう。
後半部分では実際の中学入試の問題が並びます。最難関校の問題が並びますが、どれも前半の解き方の鉄則をもとに解くことができるので、理解しやすいです。中学受験はもちろんのこと、高校生まで役立つ文章読解のスキルを身につけることができます。受験生はもちろんですが、保護者にとっても参考になる一冊です。
受験国語の読解テクニック
小学5年生から取り組める内容でありながら、受験スキルをしっかりと身につけることのできる内容です。参考書と問題集があり、どちらも内容が分かりやすく、問題集は解答欄も大きくて書き込みやすく、解説が詳しくて読めば十分理解ができます。
問題集の中で記号選択や抜き出しの問題を集中的に解くことができるようになっている点が、弱点克服にとても有効です。似たような問題をたくさん解くことでコツが身につきます。
完成語句文法改訂新版
こちらも小学校5年生から使える語句や文法の参考書です。地味な体裁ですが、しっかりとまとめられており、中学受験で必要な語句文法は網羅できます。
どうしても中学受験の際に、語句や文法は塾の授業で飛ばされる単元が出てきがちです。授業で扱わなかったものもしっかりと拾うことができるので、語句や文法の出題が多い学校を受験する際には用意しておきたい一冊といえます。
まとめ
今回は国語が苦手な子に向けて、弱点克服のために家庭でできることや、おすすめの勉強法について紹介をしました。国語は必ず弱点克服ができる科目です。苦手な子でも努力をすれば合格平均点まで確実に取れるようになります。できないとあきらめるのではなく、努力をするよう心がけましょう。
ただし、対策を講じても即効性があるものではありません。国語の成績が上がるまでには時間がかかるので、できるだけ早めから取り組むようにすることを心がけましょう。様々な方向からアプローチができるよう、家庭での会話も受験を意識して、様々な話題で会話をすることを心がけると文章読解での視野を広げるきっかけになります。
小学生の学力の成長期はさまざまです。小学5年生のときに大きく伸びる子もいれば、過去問を解き始める小学6年生の9月からで伸びる受験生もいます。大切なのは焦らずにテストの点数が伸びないからと国語に苦手意識を持たず、本を読んで文章を読み解く経験を積むことです。
また、中学受験の間は国語が苦手でも、将来の学力の伸長に備えて基本的な内容だけはしっかりつけておきましょう。国語に関する能力は中学、高校、大学とずっと必要になり、社会に出てからも読み解く能力と文章を作る能力は重要となってきます。
このため中学受験を視野に入れている受験生は早めに本を読む習慣を作ったり、読解力を身に付ける勉強法を早いうちから実践するようにするといいでしょう。読解力は一朝一夕ではなかなか身につきにくい部分ですが、一度身についてしまえば、大学受験まで得点源にできますので、頑張って取り組んでいきましょう。