都立中高一貫校とは?受験するなら知っておきたい3つのこと

都立中高一貫校とは?受験するなら知っておきたい3つのこと

昔の中学入試といえば私立の一貫校を受検するのが当たり前でした。しかし、最近では中高一貫教育を行う公立一貫校が増加して注目を集めています。今まで中学受験を検討しなかった層まで受験者を増やしており、今後も受験者数は増える見込みです。

中でも都内にある都立一貫校は特に人気で毎年多くの受験生を集めています。都立の学校であるために学費がかからないとか、トレンドの学校だから、といった理由で志望する家庭も少なくありません。しかし人気が高く、多くの受験生が集まっているので受検にあたってはしっかりと情報収集が必要です。

そこでこの記事では、人気を集める都立一貫校がどのような学校であるのか、受検するにあたり知っておきたい情報を、概要・特徴・入試という3つにわけて紹介していきます。

目次

都立一貫校はどのような学校なのか

都立一貫校を受検するにあたっては、概要を知ることが大切です。まずは大前提として知っておきたい学校の概要について紹介をしていきます。

一貫校には2つのタイプがある

まず、必ず知っておきたい情報として都立一貫校は2種類のタイプがあるということです。ひとくくりに「都立一貫校」といいますが、中には「併設型」と「中等教育学校」という2種類の学校があります。

併設型というのは中学と高校が併設されている学校です。中学から高校には受検の必要がなくそのまま進学できます。しかし高校からの生徒募集があり、受験をして合格した生徒たちが入学してくるのでカリキュラムとしては中高それぞれの内容を3年間かけて学習するのが一般的です。

それに対して中等教育学校は中学と高校を分けていません。中学校にあたる3年を前期課程、高校にあたる3年間を後期課程として6年間の一貫教育を行っています。そのため高校での新たな生徒募集がありません。6年間一貫教育が行われるという点では私立の中学に近いといえるでしょう。ただし、2021年度以降どんどん併設型の学校でも高校での募集が停止されることが決まっており、今後の募集人数の変化や指導内容の変化が期待されています。

現在都立一貫校とされる学校は11校ある

2005年に都立白鴎高等学校附属中学校が誕生して以来、公立一貫校は新設校が増えています。一貫教育にすることによって実績も上がっており、どの学校も軒並み人気です。現在設置されている都立の中高一貫校は10校です。九段中学校は千代田区立であるために都立ではありませんが公立の一貫校ということで都立一貫校として扱われることが一般的となっています。設置されている一貫校は以下になります。

・都立小石川中等教育学校
・都立白鷗高等学校附属中学校
・都立両国高等学校附属中学校
・都立桜修館中等教育学校
・都立富士高等学校附属中学校
・都立大泉高等学校附属中学校
・都立南多摩中等教育学校
・都立武蔵高等学校附属中学校
・都立三鷹中等教育学校
・区立九段中等教育学校

都立一貫校の魅力

都立一貫校が人気を集めているのはどのようなところに理由があるのでしょう。ここでは実際に保護者や生徒たちが入学を志望する理由を3つ紹介します。

学費の安さ

都立の一貫校の魅力としてこれは外せない項目です。中高6年間の学費は公立の中学と高校と変わりません。そのため中学3年間にあたる前半部分は都立中学と同様に授業料が無料ですし、高校にあたる後半3年間も公立高校と同じくらいの金額です。

私立中学の場合には、入学時に入学金や施設拡充費や寄付金といったものがありますが、都立の学校なので入学時にこういったお金を支払うこともありません。また、私立の中学は高校に上がる際に再度入学金や寄付金の支払いがありますが、都立一貫校の場合には支払う必要がないです。私立の中学に比べると大幅に学費を抑えることができます。

多彩なカリキュラム

公立一貫校というのは、文部科学省が1999年に始めた中高一貫教育制度から誕生しました。中学と高校の6年間を一貫した教育で行うことによって、次世代のリーダーを育成することを目標としています。そのため、今までの公立の学校では行っていなかったようなカリキュラムを掲げており、これが公立一貫校が人気になった要因の一つです。

学校によって注力している項目は異なります。例えば、桜修館中等教育学校や南多摩中等教育学校の場合には、英語教育推進校に指定されており、英語教育に力を入れています。他にも小石川中等教育学校は文部科学省のスーパーサイエンスハイスクールに指定されており、理数系のカリキュラムが充実していて指導もレベルが高いことで人気です。特定の分野に興味関心がある生徒や、将来希望している進路に向けた勉強をしたい生徒、特徴ある教育を受けさせたい保護者から指示を集めています。

6年間での一貫教育

都立の一貫校では6年間で一貫した教育をすることができるため、私立の一貫校のように6年間をかけて大学受験に向けた勉強を行っています。効率的な授業カリキュラムを組んでいるので余裕をもって大学進学準備を進められます。実際に大学受験でも高い成績を残している学校が多いです。

また、高校受験がないこと、余裕のあるカリキュラムが組めることから独自の教育方針を掲げ個性を伸ばす教育に力を入れている学校もあります。学校行事や部活動が盛んな学校も多く、学生生活を充実したものにすることができる点でも人気が高いです。

都立一貫校の入試システムと対策

都立一貫校は公立ですが志望したからといって誰でも入学できるわけではありません。入学にあたっては適性検査があり、受検をしなければならないです。人気の学校であるために倍率も高く、私立の中学受験同様に早い段階からの準備が必要とされています。適性検査がどのようなものであり、対策としてどういったことをしておく必要があるのでしょうか。

適性検査の内容

私立の中学校の受験では国語・算数・理科・社会の4教科、もしくは国語・算数の2教科の試験を受験して合否が決まります。それに対して都立一貫校は適性検査と言われる試験を受けなければなりません。あくまでも入試問題を解くのではなく検査を受けるとされているため「受験」ではなく「受検」という表記がされます。

適性検査では一般的な中学受験で出題されるような問題は出題されません。問われる力は大きく分けると「読解力」と「表現力」です。もちろん小学校で学ぶ基礎的な学力は求められますが、計算問題を解いたり漢字を書いたりするような問題よりも、文章や資料を正しく読み取ったり、文章を読んで自分の意見を述べたりする力の方が重要視されます。

試験で求められる学力が私立中学の受験と公立一貫校の受検では異なるため、問題の出題傾向も異なるので対策が必要です。適性検査独特の出題形式や解答方法を理解しておくためにも過去問を何度も解いておくことが必要になります。

問題は2種類

試験は共同作成問題と独自問題の2種類があります。共同作成問題も、さらに適性検査Ⅰと適性検査Ⅱの2種類に分かれます。具体的な内容をみていきましょう。

適性検査Ⅰ

ひとことでいうと、適性検査Ⅰは国語に近い内容の問題です。出題された文章を基に自分の意見や設問の答えを書いていく文章力を求める問題になっています。

例年、文章は2題出題されていますが、どちらも共通のテーマがあるのが特徴です。問題を解く際には文章の内容やテーマを的確に読み取って自分の考えを表現しながら適切にまとめる力が必要になります。文章の内容を読み取って筆者の主張をまとめたり、2つの問題文を通して自分の意見や体験を踏まえて考えをまとめたりといった問題が出題され、難易度は高めです。

作文については400字から440字も書かなければならず、日頃から文章構成を考えてスピーディーに書き進める力をつけておく必要があります。特に作文は配点が60%分用意されているので合否に大きく影響するものであり、対策が必要です。

適性検査Ⅱ

適性検査Ⅱは算数、理科、社会の混合問題に近い問題で、資料を基に課題を見つけて解決する力を見る内容になっています。都立一貫校の適性検査Ⅱは大問が3つ、その中に小問が3~4題で構成されており、他県の適性検査の問題に比べると問題数が少ないです。そのため1題ごとに求められるものは多くなり、試験問題が少ないわりに時間内にすべて正確に解くのは難しい内容となっています。

設問では長い会話文を読んで内容を理解して答えを出したり、複数の資料を基に問題点を洗い出して自分の考えをまとめたりといった内容なので教科書の内容を覚えただけで解けるものではありません。今まで学習したことを基にして自分なりに考えをまとめて答えを出さなければならず、試験までに訓練が必要です。

独自作成問題

都立の公立一貫校はそれぞれにオリジナルの教育の特色があります。そこで、学校の特色に合わせて作成されているのが独自問題です。学校によっては「適性検査Ⅲ」というかたちで行っていたり、適性検査の共同作成問題の一部を独自問題に差し替えていたりと学校によって出題の方法も異なります。問題の差し替えをする場合には、差し替えは1問以内という規定があります。また、九段中については区立であり他の学校とは位置づけがことなるためにすべての問題が独自問題です。

独自問題は必ず出題することになっているため、受検対策は共同作成問題だけではなく独自問題の対策も必要になってきます。理系の教育に力を入れている学校の場合には、分析のような理系色の強い問題が出題されますし、人材育成に力を入れている学校であれば自分の意見を述べる問題が出題されます。

気を付けなければならないのが年度によっては出題傾向が変わることもある点です。学校によっては前年度までと全く異なるタイプの問題が出題されることもあります。もちろん他の受験生も対策をしていないので条件は同じですが、少しでも確実に得点につなげるためにも他の学校の独自問題も活用して様々なタイプの問題に取り組める力を養っておくことも必要です。

報告書

都立中では合否を判断するのに、適性検査の結果だけでなく学校の報告書も必要です。報告書は高校入試の内申書のようなものであり、学校での成績以外にも委員会活動やクラス委員の取り組み内容、出欠といったものを記載します。報告書の比重は学校によって異なりますが、最も多い割合は「適性検査80%、報告書20%」です。決して低い割合ではないので、提出物はきちんと期限内に出すようにしたり、授業も熱心に参加したりといった最低限のことは取り組むように家庭でも指導しておきましょう。

適性検査対策はどのようなものをすればよいのか

適性検査対策では独特な問題が出題されるので対策が必要です。しかし、私立の中学受験に比べると対策問題集や過去問も多くありません。そのため何に取り組めばよいか悩む保護者や子どもたちは多いです。最も有効な試験対策は過去問であると言われています。

受検したい学校の過去問はもちろんですが、全国の公立一貫校の過去問を解いておくことがおすすめです。全国の適性検査の問題を見ていると、全体的に似たような傾向があり、受検する予定の学校と似たような問題を解く練習ができます。何度か解いているうちに解くために必要な知識や解き方のコツも身についてきて、とても参考になるのです。

また、定期的に行われる外部模試も受けておきましょう。最新のトレンドを知ることができたり、時事問題に絡めた問題が出題されたりして直前予想問題の感覚で取り組むことができます。普段塾に行っていない子にとっては受検本番の予行練習にもなります。

都立一貫校を受検する場合には私立は受験するべきなのか

都立一貫校はとても狭き門です。受検倍率が5倍以上という学校も多く、合格するかどうかは本人の努力だけではどうにもならない部分があります。そのため塾に通っていると私立中の受験も勧められるケースも多いです。

都立一貫校に絞って受験することも、私立中学も合わせて受験することもどちらを選んでも構いません。大切なのはその子にとって後悔のない受検、進路選択をすることです。最近では私立中の中でも都立公立一貫校を志望する子に向けた適性検査型の入試を行っている学校もあります。一貫校入試本番前に模試感覚で受検できて合格できれば成功体験を得ることができ、メリットも高いです。学校によっては得点の高い子に対して特待生制度を設けており、公立一貫校に進学したのと同程度の学費で通うことができるケースもあります。最初から「公立一貫校しか通わせない」と考えるのではなく、条件次第では私学も選択肢の一つとして考えておくのも良いでしょう。

まとめ

今回は人気を集めている都立公立一貫校について紹介をしました。学校の取り組みに特色がありながらも公立に通うのと変わらない学費で通うことができるため、今後も人気は継続する見込みです。併設型の学校については今後中等教育学校への移行が進むことで募集要項の内容も変更がされると考えられているので情報収集をしておきましょう。

適性検査も普段の学習だけでなく対策をしておくことが必要です。過去問を中心に取り組み早い段階から資料の読み取りや自分の意見をまとめる練習をしておきましょう。受検にあたっては私立の中学を併願することも最近では増えています。適性検査型の試験を実施している私学も見ておくと選択肢が広がります。

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