近年では首都圏を中心に私国立中学を受験する人が増えています。周りで中学受験をする人も増えているため、中学受験をするべきなのかと悩んでいるご家庭も多くあるでしょう。
中学受験は様々なメリットがある反面、デメリットもあります。そして、決して簡単なものではありません。本格的な受験勉強自体も4年生からスタートしたとしても、3年は勉強主体の生活になりますし、そこまでしても、第一志望校に合格できる子は少数です。
この記事では、そんな中学受験を迷っている方に向け、私立中学校に通うことのメリットとデメリット、私立中学の特徴を順番に紹介していきます。
私立中学を受験するメリット
私立中学を受験するためには受験勉強が必要です。だいたい小学校4年生から塾に通い、かなりの勉強をしなければなりません。親子共に大変なこともたくさんありますが、それでも中学受験をする人が絶えないのは、中学受験をすることにいくつかのメリットがあるからです。
学校の教育理念が明確
私立中学はどこも学校ごとに明確な教育理念があります。「放任主義でのびのびと育てる」や「しっかり面倒見がよく、学習面のサポートを徹底する」とか、「理系教育に注力をする」とか、大切にしている項目も学校によって様々です。
家庭の指導方針と教育理念が合っている学校、子どもの個性を伸ばすことのできる学校を選ぶことで6年間の学生生活で学習面だけでなく内面での成長も促すことができます。多感な年ごろだからこそ、子どもに合った環境を選びたいと考える保護者は多く、そのために私立中学を選択する家庭が多いのです。
最新の学習環境が整っている
私立中学に通うと学費がかかる以外にも施設使用料など様々な費用が掛かります。学費が高い、という印象も受けますが、その反面資金が十分にあるために学習環境を整えやすいというメリットがあります。
最新の機器を導入しやすいので、生徒にタブレットを貸与して学習管理を進めている学校も多いです。カリキュラムや教材も積極的に新しいものを導入していますし、理科室も設備が整っていて中学や高校のうちから本格的な実験を体験することができます。図書館の蔵書数も豊富なところが多いですし、大学付属の学校の場合には大学の図書館を利用できるというところもあります。
先生の異動が少ない
私立中学は学校法人が運営をしており、公立の中学や高校のように先生の異動がほとんどありません。そのため環境が大きく変化しないという安心感があります。
多くの私立中学では研修制度も整っていて、先生たちの質も高いです。学習面はもちろん、精神面でも子どもたちを支えてくれる存在になってくれます。
大学受験を見据えた授業展開
多くの私学では学習指導要領で定められている授業時間よりも長く授業時間を設けていますし、カリキュラムも大学受験を意識して先取り学習が行われます。ほとんどの学校は中高一貫指導であることを利用して、6年間で学ぶ内容を5年間で学び、最後の1年は大学受験対策に向けての学習を行っています。
先取り学習を行うことで授業についていけないか不安に思う人もいるでしょう。しかし、受験をしてある程度同水準の生徒が集まっていること、中学受験の勉強によって中学に入ってから習うことの予習ができていることから、そこまで負担なく先取り学習の状態で勉強を進めることができます。
このような先取り学習の形式をとっても十分生徒たちは授業についてくることができますし、実際に受験でも結果を残しています。私立中学の中には、大学受験の際には予備校に通わなくても十分難関大学に合格できるだけの実力を身につけられるという学校も少なくありません。
もしも授業についていくことができなかったら…
公立の中学校に比べて私立中学は授業進度が速いです。そのためもしも授業についていけなかったらと不安に思う保護者も少なくないでしょう。基本的には毎日の授業をきちんと聞いて、宿題をこなしていけば合格する学力があれば十分ついていくことが可能です。
とはいえ、中には中学に合格できたことで安心しきってしまい入学後全く勉強をしなかったり、背伸びしすぎて無理のある学校に通ってしまったりすれば授業についていけなくなるようなこともあります。そのような際には学校が補習を行ったり追加課題を出したりしてサポート体制を整えてくれている学校がほとんどです。
しかし中にはあまりにも学力が追い付いていなかったり、生徒本人にやる気がなかったりすれば留年や退学といった措置がとられることがあります。私学は学校のルールによって留年措置もとることができるので、入学後にある程度無理なくついていける学力の学校を選んでおくことが望ましいでしょう。
生徒の入れ替わりが少なく、気の合う仲間と出会える
高校入試を実施している学校もありますが、ほとんどの学校が完全中高一貫性をとっています。そのため中学受験で合格したメンバーで6年間を過ごす学校が大半です。思春期の多感な時期に同じ仲間と過ごすことで一生の友達を得ることができます。
また、学校の校風を気に入って選んでくる生徒が多いので、似たようなタイプの子が集まります。そのため気の合う友達が見つかりやすいです。受験を経験したことで精神的に大人な子も多く、高い志を持った仲間も多いです。そのため精神的な成長を促しやすいですし、トラブルも少なく過ごしやすい環境で学生生活を送ることができます。
推薦枠や大学附属など大学受験が有利になる学校が多い
中学受験を志望する家庭の多くが最初に考えるのが「大学受験に有利な学校であるかどうか」ではないでしょうか。大学附属でそのままエスカレーター式に進学できる学校はとても人気がありますし、近年は大学と提携をして附属校となっている私立中学や高校もどんどんと増えています。
附属大学がなかったとしても、難関校への進学実績が高い学校や、推薦枠を多く持っている学校も人気があります。せっかく頑張って私立中学に入学するからこそ、出口が約束されている学校に入学しておきたい、というのは安心材料が得られるため誰もが考えることです。
就職活動の際にも聞かれるのは最終学歴である大学名です。どれだけ高い偏差値の中学や高校に合格したとしても、就職活動の際には書く場面がありません。そのため、大学附属校や推薦の枠が多くある学校を選ぶことは、将来のためにも少しでも良い学校に通わせたい、将来の進路の選択肢がある学校に通わせたい、という考えから大学の進路が見えやすくメリットが高いと言えます。
私立中学受験をするデメリット
何においても言えることですが、良い面があれば悪い面があります。私立中学受験においてはどのようなデメリットがあるのでしょうか。
費用が掛かる
中学受験では基本的に、小学4年生頃から塾に通い始めます。週に2日から3日ほど通い、さらには長期休暇ごとに講習も行われますし、単元克服ゼミや入試対策講座といったものもあります。受験中だけでもかなりの費用が掛かりますが、入学後も私立中学だと塾に通っていたときと同じくらいの費用がかかる学校がほとんどです。
また、受験中も出願料や入学後の手続き費用も掛かります。そのため受験のために塾に通うところから私立中高一貫校を卒業するまでにはかなりの費用が掛かります。もちろん、費用がかかる分たくさんのメリットはありますが、公立に通うのに比べるとかかる費用は5倍以上です。
受験勉強以外の時間を取るのが難しい
中学受験では小学校の勉強だけでは不足する内容があるため、塾に通うのはもちろんのこと内容を身につけるために宿題を解くだけでなく自主的な勉強が必要です。そのため受験勉強以外に時間を割くことが難しくなってきます。
具体的には塾に通い始めるとほかの予定を入れることが難しくなってくるので習い事も塾以外は続けることが難しくなります。趣味としてピアノや野球、サッカーといった習い事をしていたとしても、ある程度の時期が来たら受験勉強のみに専念することが必要です。
また、習い事だけでなく友達と遊んだり家族と出かけたりという時間を作ることも難しくなってきます。多くの場合、受験勉強をするとなると、小学校4年生頃からほとんどの時間を中学受験に割くことになります。
そのため時にはストレスフルになったり、受験勉強が辛くて辞めたいと言ってしまったりするようなことも少なくありません。本人が受験をしたいと言い始めてしたことであったとしても、やはり実際に受験勉強が始まってスケジュールがハードであることや思うように成績が上がらないこと、遊びに行けないことを経験すると気持ちも変わってしまうことがあります。
そういったときに、ただ一方的に保護者が「あなたがやりたいって言ったことだから」とか「大変なら辞めなさい」といったことを言うのは逆効果です。子どもたち自身の精神年齢では体験しないと受験勉強の大変さは理解できません。その都度話し合いながらどのようにしていけばいいのか、本当に受験勉強をやめて後悔がないのかを考えさせ、精神的な成長を促しつつ今後について子どもに考えさせていきましょう。
中学受験は絶対に結果が出るとは限らない
中学受験をしたからといって必ずしも第一志望の学校に合格するわけではありません。これはデメリットとは少し異なることですが、注意点として頭に入れておくべきことです。どれだけ高い志で頑張って受験勉強をしたとしても合格できないこともあります。
これは親子ともに心にとどめておく必要のあることです。「どれだけ頑張っても合格するとは限らない」ということをわかっていても挑戦したいかどうかを考えたうえで中学受験をするかどうかを決めるようにしましょう。
どうしても受験勉強をしている中でスランプはあるものですし、モチベーションも高い状態を維持することは難しいです。そのようなとき、子どもたちだって辛い気持ちになりますし、何とか状況を好転させたいと考えています。大人が責めるような言葉をかけてしまうと、傷つき更にスランプに陥ってしまう可能性があります。
万が一第一志望の学校に合格できなかったときにも「こんなにお金をかけたのに」とか「塾への送迎をしたのに」「お弁当の支度をしたのに」などと思ったとしても子どもには言うべきではありません。子どもたちにとっては頑張っても報われないことがあるというのは、中学受験が最初の経験になります。失敗を糧に次の高校受験や大学受験で成功をするためにも、ネガティブな声掛けをすることは避けましょう。
中学受験は大変なものです。親子共に勉強や通塾が大変であること、旅行やスポーツを楽しめる時間が減ること、どれだけ頑張っても臨んだ結果になるとは限らないことを親子ともに納得したうえで受験勉強を始めるようにしましょう。
メリットを得るためには学校選びが大切
中学受験のメリットを最大限に得るためには学校選びが大切です。失敗しないためにはどのようなことに気をつけておくと良いのでしょうか。
親子でしっかりと話合いをして志望校は決める
中学受験のメリットはどのような学校に通っても得られるものではありません。きちんと自分の性格や成績に合った学校を選んだり、家庭の方針と会っている学校を選んだり、無理のない通学距離の学校を選んだりしないと無理が生じて学校に通うのを続けることが難しくなってくることも出てきます。
そこで、中学受験をする際にはしっかりと自分に合った学校を選ぶことが大切です。ただ偏差値が高い学校とか、大学附属とか、共学とか、といった縛りだけで学校を探してしまうと入学後思っていたような学生生活が送れない可能性があります。また、保護者の希望と子どもの希望があっておらず、どちらかの希望を押し通してしまうことも希望と実際の乖離が大きくなる可能性があります。
そこで、志望校を検討するときにはしっかりと親子で話し合い、どういった学校に通うことが望ましいのかを話し合うようにしましょう。せっかく努力をして希望の学校に通っても望んでいないような結果を迎えないようにするためにも、第二志望以降の学校であったとしても「通ってよかった」と思える学校に進学するためにも、志望校探しはとても大切な役割があるのです。
迷ったら塾の先生の意見を参考にする
志望校選びをするにあたっては、様々なことで迷うものですし、親子でも意見が食い違うことも少なくありません。偏差値的にどのくらいの学校を狙うことができるのかということも、素人だと難しいと感じるものです。
そこで、迷ってしまったら塾の先生にアドバイスをもらう機会を設けましょう。具体的には以下のようなことを客観的にアドバイスしてくれます。
- どのくらいの偏差値の学校を目指すことができるのか
- 今後どのくらいまで成績の上昇が見込めるのか
- 性格的にどのようなタイプの学校が合っているのか
- 希望する校風の中学校はどのようなところか
こういったことは塾の先生のように経験があり、様々な学校の生徒を見てきた経験のある人だからこそもらえるアドバイスです。そして、志望校探しで視野が狭くなりがちになっているときに、新たな選択肢を見つけるための突破口にもなってくれます。
子どもも年頃になってきて保護者の言うことには反抗したがったり、聞く耳を持たなくなったりしがちです。だからこそ、保護者以外の大人からのアドバイスをもらう機会は貴重ですし、話を聞いて考えを改めるきっかけにもなります。状況によっては塾の先生から話をしてもらったり、三者面談の機会を設けてもらったりして志望校について考える機会を設けましょう。
まとめ
中学受験を乗り切ることは親子共に簡単なことではありません。時には辛くなって子どもも弱音を吐くこともあるでしょう。そのようなときに、同じように親も落ち込んだり叱ったり、過度な期待をかけるような言葉をかけず、味方であることを伝えてあげましょう。応援の言葉を投げかけることによって頑張ろうという気持ちを持ち、また子どもは進めるようになります。
どれだけ頑張る気持ちがあっても、思うように成績が上がらなかったり、過去問の点数が低かったりすれば気持ちが沈んで勉強がはかどらなくなることもあるものです。そのようなときでも保護者は常に一番の味方であると思えていると子どもたちも心強いです。
受験勉強をしている中で、保護者ができることというのはほとんどありません。勉強を教えることも、内容が難しいですし、教え方も塾の先生と違うと理解できず余計に混乱することもあります。そこで、勉強をどうにかしようとすることより、精神面でのサポートをすることが中学受験をポジティブに乗り越え、第一志望校に近づくために大切です。
なお、私立中学以外に国立中学も検討している場合は、下記の記事も合わせてご確認ください。