現在、首都圏では3~4割近くの小学生が中学受験をしていると言われています。生活環境のことや、大学進学のことなど、中学受験をすることのメリットは様々なものがあります。思春期の多感な時期であり人間形成において大切な時期ですから、できるだけ良い環境に身を置いて欲しいと考えるのは保護者として当然の感情といえるでしょう。
しかし、私立に通わせるとなると気になるのが学費です。公立中学に通うのとは大幅に費用が変わってきます。「私立=学費がかかる」というのは誰の頭にもあることです。しかし、具体的にどのくらい学費がかかるのかということまではきちんと知られていません。そこでこの記事では、私立中学校に通わせることになると、どのくらい学費がかかるのかを入学費用や授業料といった具体的な費用について考えていきます。
私立中学と公立中学の学費はどのくらい違うのか
一般的に私立中学は公立中学の3倍学費がかかると言われています。具体的にどのくらいの金額の違いがあるのでしょうか。今回は東京都のそれぞれの学校をモデルにしてかかる費用がどのくらいになるのかを見ていきます。
一般的な都内の公立中学校の学費の例
都内の公立中学校に通ったらどのくらいの学費がかかるのか、3年間の金額とその合計を算出していきます。
- 学費 755,000円(3年間)
- 生徒会費 9,000円(3年間)
- 後援会費 9,900円(3年間)
- 給食費 170,640円(3年間)
3年間の学費の合計・・・1,012,504円
※その他にかかる費用
・制服やカバン、体操着などの指定品購入70,000円ほど
・部活によっては部費が別途かかることも。
都内の私立中学校の学費の平均額
- 入学金 254,979円
- 学費 468,090円(1年間)
- 施設費 40,207円(1年間)
3年間の学費の合計・・・1,779,870円
※その他にかかる費用
・制服やカバン、体操着などの指定品購入 (学校によっては不要な場合も)
・修学旅行積立金(外国など費用が高額な場合)
・寄付金(学校によってはない場合も)
・部活動にかかる費用
公立と私立ではその他費用の違いが大きい
公立と私立で最も大きな違いは「その他にかかる費用」の部分です。私立になると施設拡充費や海外研修の費用、定期代などこまごまとかかってくる費用があります。部活動も私立だとユニフォームや高額な用具が必要になる部活も少なくありません。学校のパンフレットに掲載されている学費だけを見ると、私立は思っているよりも学費がかからないと思うことがあります。
しかし、実際に通わせてみると「思っていたよりも学費がかかる」と感じるのは、このようなパンフレットには掲載されていない学費以外にかかる費用があるためです。そして、この部分の費用は学校によっても差があるため、どのくらい学費がかかるのか算出する際には学費以外の部分も確認することが必要です。
中学受験をせずに公立に通えば学費はかからないのか?
私立に通うと公立に通うと学費が3倍以上かかる、ということはよく言われますが、公立に通えば本当に学費はかからないのでしょうか。公立中学に3年間通った際にどのような費用がかかるのかを算出していきます。
高校受験のための塾の費用
中学受験同様、高校受験のために塾に通うという家庭も多いです。塾に通う時期や授業の科目数によっても費用は変わってきますが、学年が上がるごとにかかる費用は高くなる傾向があります。中学受験同様に通常授業以外にも長期休みには講習もありますし、難関校受験の場合には合宿やゼミもあります。
集団授業と個別指導とでも変わってきますが、一般的に高校受験のための通塾は1年に50万円から100万円かかると言われています。中学受験のための通塾と費用はさほど変わりません。そのため公立中学の学費は私立に比べると割安ですが、通塾費用と加えるとほとんど変わらないというケースも出てくることがあります。
私立高校に進学した場合にかかる費用
高校受験で私立高校に通うことが決まったら、高校入学前に入学費用の支払いが発生します。支払う金額は私立中学合格時と大きな違いはありません。入学金や施設拡充費、寄付金、制服代といった費用がかかるので学校によっては50万円ちかく入学時に支払うこともあります。
高校の入学金というのは高校入学に関する費用なので、公立中学校に通っていてかかる学費とは言いにくいです。しかし、入学費用は実際には中学在学時に支払うことが必要になります。公立中学に通っている間は学費がかからない、大きな出費がない、というイメージがあるために、私立高校に通うことになって発生する費用は忘れがちです。もしも私立高校に通うことになったら大きなお金が動くことがあるというのは頭に入れておきましょう。
部活や習い事で費用がかかることもある
私立中学に比べると公立中学の方が部活にかかる費用は抑えられるイメージがあります。しかし、合唱や吹奏楽、スポーツで優秀な成績の学校の場合には、コンクールや大会に出場するために費用がかさむことがあります。吹奏楽の場合には楽器購入、スポーツ部の場合には遠征費用やユニフォーム代、レッスン費用が発生することもあります。
また、個人的に習い事をしている場合も本格的なものになると費用が高額になりがちです。ピアノも週に複数回レッスンが行われたりコンクールに出場したりすれば費用がかさみます。スポーツ系の習い事も強いチームに所属すると泊まりでの遠征や合宿があるものもあります。こういったものは私立中学の部活動よりも高額になることが一般的です。
中学受験を経て私立中学に通っても学費を抑えることはできる
私立中学に通った場合、学費が高額になるというイメージがありますが、必ずしも高額になるとは限りません。学費を抑える方法はいくつかあります。
学費があまりかからない学校を選ぶ
私立中学も学校によってかかる費用は全く違います。学校によって学費はもちろんのこと、寄付金が不要だったり施設使用料がかからなかったりする学校もあるのです。一昔前は1年間にかかる学費が高い学校ランキングをよく目にしましたが、最近は逆に学費がかからない学校ランキングを掲載している教育雑誌もあります。
もちろん、学費が安いからといって授業内容が薄いとか設備が充実していないといったことはありません。学校も様々な工夫をすることによって私立の高水準の教育を維持しながら学費を抑えています。積極的に新たな取り組みをしている学校も多く、学費だけでなくカリキュラムや設備面でも魅力的な学校も意外と多いです。
特待生制度を利用する
私立中学の中で特待生制度を導入する学校が増えています。特待生制度も様々なものがあります。中には中学に入学してから卒業するまでの学費がほとんどかからないという学校もあり、利用するとかなりお得に通うことができるのです。
入試段階から特待生制度がある学校の場合、特待生で合格すると入学時にかかる入学金や制服代が免除という学校、中学1年生の1年間の学費が免除という学校、中学3年間の学費が免除という学校などがあります。学校によっては中学入学後の成績で2年生以降に特待生となることができるケースもあります。もちろん成績が伴わなければ特待生になることはできません。しかし、狙えるレベルにある場合には、特待生制度のある学校を志願してみるのもよいでしょう。
授業料以外の費用があまりかからない学校を選ぶ
私立中学は授業料以外にかかる費用が公立に比べて圧倒的に高いです。そこで学費以外の部分の費用があまりかからない学校を選ぶだけでも学費を抑えることができます。例えば私立の中には制服やカバン、体操服の指定がないという学校もあります。他にも修学旅行が国内の学校や寄付の必要ない学校もあります。こういった学校を選ぶと費用がかなり抑えられるのです。
また、歴史のある学校の場合には卒業生からの寄付があることで、学生の負担が軽減されていたり学校独自の奨学金制度が充実していたりすることもあります。こういったものは学校のパンフレットだけではなかなか入手できないものです。学校説明会や、塾の先生からのアドバイス、周囲で受験した人からの口コミといったものにもアンテナを張っておき情報を得る機会を作っておきましょう。
中学受験をさせるかどうかを決める際に考えるべきこと
中学受験をさせるかどうかを決めるのは学費の問題以外にもいくつかの問題があります。考える際にどのような視点を持っておくと良いかを紹介していきます。
学費は大学までトータルで考えることが大切
私立中学に通うと学費がかかる、と考えがちですが私立中学に通ったからといって必ず学費がかかるとは限りません。例えば、大学附属の中学に合格して塾に通わず大学まで一貫教育を受けることになった場合、公立中学校から私立高校受験をしてさらに私立大学の受験をすることになった場合の学費や塾の費用よりも学費を抑えられるケースもあるためです。
もちろん、中には塾に行かずに公立高校から国立大学に合格する子もいます。そのため私立中学に通わなかったからといって後から高額な学費が必要となるケースばかりではありません。そのため最終的にどのくらい学費がかかるかというのは大学卒業時まで正確に予測することは難しいです。しかし、準備のためにもシミュレーションをすることは必要になります。その際には目先の進級だけにとらわれずその後の進学先や将来希望している進路を加味して考えておくと、どのルートが学費を抑えられるか考えやすくなります。
子どものタイプをよく考える
子どもによって学習面でも精神面でも成長する時期も様々です。中学受験のときには精神的にも幼く、ほとんど親の意思で受験を始めます。それに対して高校受験のときには自我も出てきて自分で志望校も決めたいと思うようになりますし、反抗期もあり保護者の言うことに耳を傾けなくなりがちです。そのため高校受験になると本人と塾に受験を完全に任せきりになるということも少なくありません。中には完全に子どもに主導権を握らせた方が成績の伸びるタイプもいますし、逆のタイプもいます。そのため、わが子がどういうタイプなのかの見極めが必要になるのです。
子どものタイプによっては費用がかかったとしても早く方向性を決めた方が良いという場合もあります。そのような場合には少々費用がかかったとしても中学受験をした方が将来的な費用が掛からないというケースもあります。費用のことを考えながらも子どものタイプを考えて最も良いところを伸ばせる教育はどのタイミングでどのような受験を促すべきか考えて行動することも大切です。
学費は早いうちから計画的に準備を
どのタイミングの受験も子どもたちが「塾に通いたい」とか「この学校に行きたい」といった気持ちでモチベーションが上がったときにすぐに始められれば最高のスタートを切ることができるでしょう。そのときに金銭的な不安でストップをかけることは避けたいものです。そこで早いうちから計画的に準備をしておくようにしましょう。
家計管理をして支出を抑えるようにしたり、将来的な神学に向けて学資保険や積立式の定期預金を準備したり、といった準備は早いうちから計画的に行うことで費用の捻出がしやすくなります。他にも急遽入学費用の準備が必要な場面では、奨学金や教育ローンといったものを利用するのも一つの方法です。もちろん利用せずに進学できることが理想ですが、万が一のときのためにいろいろな方法を模索しておきましょう。
私立中学に進学するというのは入学後の学費だけではありません。出願料や入学時に支払う一時金、中学受験のために塾に通う費用といったものも必要になります。どのくらいの金額がどのタイミングで必要なのか、年間の収入からどのくらいの金額を塾に支払えるのかといったことをしっかりシミュレーションしておき、準備を進めておくことが大切です。
まとめ
今回は中学受験をして私立中学に進学する際にどのくらいの費用がかかるのかを紹介しました。一般的に私立中学に通う方が学費がかかるとされていますが、具体的には学費だけでなくその他の費用の部分でもかなりの費用がかかることになります。進学する学校によっても費用が変わってくるので学費だけでなくそれ以外の費用についても確認するようにしましょう。
また、中学受験をして私立中学に通うよりも他の選択をした方が将来的には費用がかかるというケースもあります。公立中学校に通っても、その後の進路で私立高校や大学に進学したりそのために塾に通ったりすることでトータルの費用が大きくなるケースもあるのです。
子どもの特性によってもどこのタイミングで受験をするのがもっとも良さを伸ばすことができるかどうか、というのも変わってきます。子どものタイプによっては高校受験以降で受験をすることで費用がかかってしまうケースもあるので、子どもタイプを考えてどのタイミングで受験をするのがベストか考えることも大切です。