女子も高学歴化が進んでおり、最近では中学受験をする子も増えています。男子御三家から派生して「女子御三家」と呼ばれる学校もあります。男子の御三家はすべての学校名を挙げられるという人も、女子御三家は学校名がわからないという人も少なくありません。
女子御三家と呼ばれる学校は「桜蔭中学校・高等学校」「女子学院中学校・高等学校」「雙葉中学校・高等学校」の3校です。皆、女子校であり進学校です。御三家としてひとくくりにされがちな3校も、学校ごとに様々なカラーがあります。そこでこの記事では、女子御三家の3つの学校の特徴について紹介をしていきます。
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桜蔭中学校の特徴はどのようなものか
女子御三家の一つである桜蔭中学校には以下のような特徴があります。
学校の歴史
桜蔭高校は関東大震災の復興をしていた大正13年に設立されました。現在のお茶の水女子大の前身である東京女子高等師範学校の同窓会である桜蔭会の会員が「社会に教育で恩返しを」という使命のもとに出資し合い、理想の女子教育を目指したことがスタートです。初代の校長は桜蔭会の会員から選挙で選ばれるという、今までの私学には例のない学校づくりが行われています。
建学の精神・校風
建学の精神は「礼と学び」です。設立から80年余り、この精神が学内では受け継がれています。中学1年生の授業で絵は週に1度「礼法」の授業があり、2年生以降はホームルームで5週に1度「礼法」を学ぶ機会を設けています。
礼法というのは学校説明会資料では「目に見えない美しい心を美しい動作で表すことを目指すこと」とされています。具体的な内容としては、礼の仕方やものの持ち方・受け渡し、正しい姿勢と歩き方、椅子の座り方といった基本動作の美しさを学んでいきます。
他にも来客時の作法や食事の作法など、知っておきたい立ち居振る舞いについては一通り学ぶことが可能です。動作を学ぶことによって、周りの人への思いやりや身の回りのものへの感謝、人間関係の認識といった、目に見ええない部分にも意識を向けることを目指しています。
創立時から校訓として「勤勉・温雅・聡明であれ」「責任を重んじ、礼儀を厚くし、よき社会人であれ」というものを掲げています。これは「良き社会人」を目指して、家族や社会生活で起こる問題を受け止めて解決に向けて自信の力を発揮し、周囲から信頼されるような人間になることを目指しています。学園生活の中で日常的に聡明さを学ぶことを目指した指導が実践されています。
他にも「私たちの信条」として「礼儀正しさ」「勤勉」「自首の精神」「清楚で質素な服装」というものを定めています。学園全体で「知・徳・体」の調和がとれた教育を行っています。ただ学力を高めるだけでなく、感性を磨くための芸術教育や体力を備える体育教育、社会で活躍するためのキャリア教育、女性らしさを備えて羽ばたくための礼法といったことにもバランスよく注力していることが特色です。
学習面での取り組み
女子校の中では長く東大合格者数トップを維持していることでも知られている桜蔭では中学3年生で自由研究に取り組みます。1学期の初めから夏休みまでを使ってじっくりと取り組んでおり、生徒たちが選んだテーマは多様でどれも完成度が高いものがそろうことで有名です。
自由研究を通して生徒たちは自分たちで文献や資料を集めて読み込み、研究する力を養います。最終的に仕上げた論文は9月上旬に提出した後、保護者や生徒を対象にした研究発表会も行います。最終的に全員の論文を要約したものを本にまとめ残すようにしており、中学3年の学びの成果が起こるとともに、自己確認することのできる場にもなっています。
授業内では独自の教材を使用し、高度な教育を中学から行っています。高校生からは志望別でコースを3つに分け、選択科目も豊富です。英語と数学は習熟度別の授業を行っており、学校内でも大学受験対策はち密に行っています。
入試問題傾向
桜蔭中学の入試問題は4科目を通してどれも問題量が多く、難易度が高いとされています。具体的に各教科の特徴を挙げてみましょう。
算数
作業量・処理量が多く、細かな部分まで確認する力が必要です。正確な計算能力、考え方や式をコンパクトにまとめてできるだけスピーディーに処理していく力が求められます。
国語
大学入試とも思えるような文章量の長文読解が出題されます。正確に文章内容を速く読み込む力が問われます。記述問題が全体の8割を占めているため、記述対策も必要です。日頃から自分の考えをまとめたり、文章内の言葉を使って記述していく練習をしたりしておきましょう。
理科
基本的には典型問題が出題されますが、難易度は高めです。全般的に暗記事項は頭に入れておく必要があります。以前はあまり出題されていなかった気象や天体の問題も近年では出題されるようになっており、全分野まんべんなく知識を身につけておくことが望ましいでしょう。
社会
全ての分野から問題が出題され、単元の垣根を超えて関連知識が出題されることもあります。今後大学入試で重視されるようになる、思考力や表現力を問うような問題も出題されるようになっており、知識を身につけるだけでなく自分の意見や考えをまとめて記述する力も身につけておく必要があります。問題が多く、難しい問題も多くあるので「捨て問」を見抜いて取るべき問題を確実に抑える、という問題の取り組み方のトレーニングもしておくことが大切です。
女子学院中学校の特徴はどのようなものか
女子学院はどのような特徴のある学校なのでしょうか。ポイントをまとめて紹介していきます。
学校の歴史
1870年に創立されたプロテスタントの学校です。キリスト教の精神に基づいて人間性を育む教育を行い、高い理想を持った自立した女性を育成することを目指しています。一般的な女子校は学校名を識別するために「○○女子中学校」といった名前ですが、女子学院はそういったものがついていません。これは最古の女子中等教育学校であることが理由です。明治の初期から外国人宣教師や日本人のキリスト教徒によって女子教育が行われており、100年以上の歴史を誇っています。
建学の精神・校風
女子学院といえば「自由な校風」として知られています。校則も細かな決まりがなく「校章のバッジをつける」と「上履きは指定のものにする」など、簡単な4項目しかありません。制服の着用義務がなく、校章のバッジをつけて登校しています。
創立以来キリスト教教育を続けており、朝は礼拝から始まります。各学年週に1時間「聖書」の授業がカリキュラムで設けられています。
学習面での取り組み
授業は全科目バランスよく学ぶことができますが、レポートや実験、作品制作といったものにも注力しています。完全一貫校であり、2期制を選択しているので6年間で効率よく学ぶことができます。余裕をもってカリキュラムをこなすことができるので、高校では独自のカリキュラムとして社会の現代史、国語の評論読解という教科を設置しているのが特徴的です。
高2から必修選択があるものの、ほぼ共通のカリキュラムで授業しており、文理の選択は高校3年生からです。選択科目の種類は多様で、希望の進路に応じた授業が受けられるようになっています。
入試問題傾向
女子学院の入試問題は全科目を通して問題数が多めでスピードが求められるとされています。各教科の試験にはどのような特徴があるのでしょう。
算数
大問数は5~7問と年度によって差がありますが、あまり難易度の高い問題は出題されません。そのためケアレスミスをせず確実に1問1問正解する必要があります。数の性質と図形は毎年出題されており、特に立体図形は表面積や展開図は毎年出題されている頻出問題です。問題は難しくないものが多いですが、計算は少数を含んだ複雑なものが多く、短時間で正確に答えを求められる計算力が求められます。解答用紙に計算式の記述も必要となり、採点対象になっていると考えられます。そこで、過去問演習の際にはどのように考えて解いたのかという過程も残して解く習慣をつけておきましょう。
国語
大問は2問ですが、文章量が多いです。そのため正確に速く文章を読み進める力が必要になります。ジャンルも様々なものが出題されており、文章内に書かれている内容を読み取って解く問題が多いです。そのため文章を読みながら書かれている内容を理解して整理していくことが求められます。文章題の中で語彙問題が出題されており、配点も3割ほどあり意外と高いです。難しいものは出題されないので過去問や塾の問題でしっかりとおさえておきすべて取れるようにしておきましょう。
理科
大問が4~5問あり、女子校の中では問題数が多めです。各分野からまんべんなく出題はされていますが難易度はあまり高くありません。基本的な知識をきちんと身につけておくこと、問題をスピーディーに解き進めることが求められる内容となっています。実験や観察、計算問題は頻出であり点差が開きやすいところなので過去問や類似問題で反復練習をしておくことが大切です。
社会
大問数が3~4題で、各分野から幅広く出題されています。問題数が多いですが、選択問題が多いので素早くどんどんと問題を解き進める処理能力が求められます。図や資料を読み解く問題もあり、ただ知識を身につけておくだけでなく知識を活用して答えを導き出す練習が必要です。
雙葉中学校の特徴はどのようなものか
雙葉中学校はどのような学校なのでしょうか。特徴を紹介していきます。
学校の歴史
カトリックの精神に基づいたミッションスクールです。1909年に設立された雙葉高等女学校が戦後の教育改革により、現在の雙葉中学校と雙葉高等学校となりました。運営母体は「幼きイエス会」という修道会で、姉妹校が国内に4校、海外にも姉妹校があります。
建学の精神・校風
「徳においては純真に、義務においては堅実に」という校訓を掲げています。教育目標は「真の知性を養う」「自ら考え行動し、責任を持つ」「一人一人を大切にし、他者と共に生きる」です。ボランティア活動が積極的に行われたり、生徒が毎日校内清掃を行ったりと、カトリック精神を基にした全人教育が行われています。校則は厳しくないですが、品のある礼儀正しい女性になることを目指しているので身だしなみが乱れていると注意されることもあります。カトリック教育のために厳しいイメージが持たれがちですが、校内はアットホームで温かい雰囲気です。
学習面での取り組み
創立時から外国語教育に力を入れており、中学3年生からフランス語を学び、高校では英語とフランス語から第一外国語を選択することができます。女子御三家の中では唯一、併設の小学校があり、小学校から英語教育を行っているので中学からの入学者は中学1年生の間だけ内進生とクラスが別れており、さらに補修も行われています。高校でもコース分けはせずに、希望進路に合わせた授業を選択できるカリキュラムを取り入れています。
入試問題傾向
雙葉中学校の入試問題はどのような特徴があるのでしょう。問題の特徴と求められる学力を紹介していきます。
算数
大問が5題ほどで、発想力を求められるタイプの問題は少ないです。年度によって問題数の増減があるので、できるだけ多くの年度の過去問に取り組んで問題量の多い年度にも対応できる処理スピードを身につけておくことが大切です。規則性の問題は頻出で、他の単元の問題にも応用されることがあります。過去問だけでなく塾のテキストも解いて様々なパターンの問題に慣れて規則を見つけられるようにしておきましょう。平面図形も頻出で、似たような問題が出題されることも多いです。そのため過去問は繰り返し解いてどの問題も解けるようにしておくことが望ましいです。
国語
国語の問題はここ数年で出題形式が変わっており、問題数や出題される文章も年度によってばらつきがあります。新たな大学入試制度を意識したものと思われ、設問の形式も選択式や空所補充、説明記述など種類が豊富です。過去問でどのタイプの問題が出題されても解けるように練習しておくのはもちろんですが、漢字や四字熟語などの知識問題で取りこぼしがないよう塾のテキストや模試で間違えた問題はチェックして覚えていくようにしましょう。
理科
生物、化学、物理、地学の4分野からまんべんなく出題がされ、大問も4題出題されています。時事的な問題も出題されていますが、基本的に歯オーソドックスな内容の問題なので、塾のテキストなどを使って知識を身につけておけば対応可能です。日頃から基礎的な問題を中心に知識を身に着けておき、秋以降は理科にかかわる時事問題にも目を向けておきましょう。
社会
地理、歴史、公民の3分野から出題され、配点は歴史、地理、公民の順になっています。出題内容は幅広く、知識の一問一答だけでなく、歴史史料や写真、統計資料の読み取りといった問題もあります。問題数も多いので、知識を身につけるだけでなく処理スピードを上げるためのトレーニングが必要です。
まとめ
今回は女子御三家の3校の紹介をしました。御三家とひとくくりにされがちですが、どの学校にも特徴がありますし、入試問題の傾向もバラバラです。
2月1日が日曜日でない限りは、3校は入試日程が重なります。そのため「御三家に行きたい」と思っても受験できる学校も絞らなくてはなりません。御三家への受験を検討している場合にはできるだけ早く見学をして、どの学校を志望校にするのか決めるようにしましょう。
中学受験は算数や国語ではなく、「社会」の出来で合否が決まります!
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