最近では首都圏を中心に多くの小学生が中学受験を検討します。中学受験は多感な思春期年代に受ける受験です。そのため子どもたちにも自分の意思が出てくるため、親子で衝突することも少なくありません。
中学受験にチャレンジするお子さんの中で、第一志望の中学に合格できるお子さんは3割程度といわれています。第一志望の中学に合格するためにも、親としてやってはいけないこと、また中学受験に失敗する原因は何か?ということを頭に入れておきましょう。一般的に、不合格となるパターンは同じようなケースが多いので、参考になるはずです。
中学受験では保護者のかかわりも合否に影響
「中学受験は親の受験」と言われることがあります。これは、中学受験には保護者のかかわりが欠かせないということであり、かかわり方が合否にとても大きく影響するということです。
中学受験の勉強を始めるのは小学校4年生頃からが多いですが、まだ受験をすると本人が決めても宿題を正しく進めるのも大変ですし、時には勉強をしたくないと言い始めることもあります。授業内容は塾で習ってきますが、その内容を理解できているか、宿題は正しく取り組めているか、といった細かな部分については保護者のフォローなしには進められません。
とはいえ、あまりにも干渉しすぎて何もかも保護者が進めてしまうと一人で勉強することができなくなりますし、受験に対しても主体性をなくしてしまう原因です。学年も上がってくると干渉することで揉めてしまうことも増えてきます。そこで学年に応じて適度な距離感を保つことも必要になります。
大事な我が子だからこそ、冷静になれず厳しいことを言ってしまうことも少なくないですし、後から考えると行動が不適切だったと反省する場面もあるものです。保護者は受験に立ち向かう子どもたちにとって最大の理解者であり、常に応援してくれる存在、困ったときや悩んだときには相談できる存在であることを目指しましょう。やはり、親子関係が良い状態の家庭は中学受験でも合格を勝ち取っている家庭が多いです。
中学受験で失敗しないために気を付けたい!NG行動5選
中学受験にあたり、子どものために保護者としてもできることをしていきたいと思うのは当然のことです。しかし、子どものためと思って空回りしてしまうこともあります。どういった行動は避けたほうがいいのかを事前に頭に入れておくと良好な関係を築きやすいです。今回は失敗しないために気を付けたい5つの行動を具体的に紹介していきます。
管理しすぎる
中学受験に合格することを目指し、学校でも熟でも家でも頑張って勉強しているお子さんに対し、保護者が管理しすぎるのは避けましょう。子どもがやるべきことをきちんとこなせるように家にいるあいだのスケジュール管理をしたり、やることのリストを作成したり、宿題の進捗を確認したり…といった行動をとることで保護者は安心できますが、子どもにとっては疎ましく感じる原因ですし、子どもたちが管理されないと勉強できない様になる原因です。
誰だって人に決められたものは取り組んでも楽しくないですし、だんだんと義務感が出てきて主体性を失ってしまいます。子どもはやるべきことを考えず指示されたものをこなすことは楽である反面、取り組むべき課題を自分で考えられなくなってしまいます。勉強は一過性のものではなく一生続くものです。いつまでも保護者がやるべきことを指示しなければならない状態になると、自分で考えて行動することができないですし、中学生以降も一人で勉強することができなくなってしまいます。
また、一度子どもの勉強状況を覗いてしまうと、あれもこれも気になってしまうものです。子どもを信じてあげることも大切です。部屋に一人でこもって勉強させるのが不安なときにはリビング学習を取り入れるのも良いですが、あくまでも見える範囲で勉強している様子を見るだけにして、取り組んでいる内容の詳細までチェックするのはやめましょう。
家で勉強を指導する
塾で学ぶ中学受験の内容は学校の授業とは違いますし、一度の授業で習うことがたくさんあります。そのため、家に帰ってきて問題を解いていると子どもが「これがわからない」と質問してくる場面があります。簡単なものであれば答えたり、一緒に解いたりしても良いのですが、何もかも家で教えることは避けましょう。
とくに算数は中学受験では方程式を使いません。大人は文章題を解くのに方程式を使いがちですが、中学受験では様々な特殊算があり、解き方も式だけでなく図を書いて解くものもあり独特です。きちんと理解して説明しないと間違えたことを教えたり余計に混乱したりするようになってしまいます。
また、保護者が勝手に教えて子どもが理解してしまうと塾の先生は子どもの正確な理解状況が分からなくなってしまいます。そこでわからない部分については塾の先生に質問して教えてもらって理解させるよう促していきましょう。塾によっては質問対応の時間を設けていたり、自習の時間を設けていたりします。
なかなか自分で質問に行けない子の場合には、連絡帳に書いたり保護者から電話を入れたりして子どもが質問しやすい状況を作るのも一つの策です。何度か質問する機会を設ければ子どもも自分から質問できるようになりますし、保護者に質問するよりも塾の先生に聞いたほうがわかりやすいことを理解できるでしょう。
成績に対して細かな指摘をする
学校での成績や塾の試験の結果は保護者の気になるところですし、これから中学受験を迎えるとなると、成績に対し神経質になるのもわかります。しかし、学校の成績や塾の試験の結果を最も気にしているのはお子さんです。
たとえ学校の成績が少し悪かったとしても、塾の試験でレベルが低めだったとしても、次回頑張ればいいことです。中学受験に向けて頑張り始めるのは早いご家庭で小学校4年生、少なくとも5年生では受験に対して対策を練り始めます。受験まで2年から3年程度、頑張っていく時間があるのですから、たった1回の試験の結果だけを見て細かく指摘するのではなく「これで苦手な分野がわかったね、間違ったところをもう1回復習してできるようにしようね」と励ましてあげましょう。
不適切な志望校選び
志望校を選ぶ際のこだわりたいポイントというのは家庭によって様々です。校風や教育内容以外にも、家からの距離や大学附属であること、進学実績、偏差値など様々なものがあるでしょう。せっかく受験するのですから、各家庭の希望している学校に通えることがベストですが、成績との兼ね合いも考えることが必要です。
どうしても「良い学校=偏差値が高い」とか「高いお金を払うんだから難しい学校に行かないと意味がない」とか考えてしまうことがあります。しかし、6年間過ごす中で子どもたちの成績は変わっていくものですし、レベルに合った学校に通わないと入学後に苦労することになります。
まだ小学生だからと思い、保護者の意見を押し付けてしまうことも良くあることです。子どもたちも自分が通う学校なので「ここに通いたい」と思う学校はあるものです。きちんと子どもの意見も反映させた志望校選びをしましょう。
あまりにも成績に見合っていない学校であったり、子どもの意志に反した学校だったりすると子どもたちはどんどんと受験勉強のモチベーションが下がりますし、入学後も楽しく通えなくてドロップアウトしてしまうこともあります。先入観を取り除き、塾の先生の意見も参考にしながら幅広い側面から子どもに合った学校を選び、親子共に通いたいと思える学校を志望校にするようにしましょう。
会話の内容がネガティブ
子どもたちが受験勉強をしているときの保護者の声掛けはモチベーション維持にとても大切です。「勉強は自分のためにするもの」とは言っても、やはり小学生にとっては保護者に褒められると嬉しいものですし、もっと頑張ろうという気持ちも持てます。
受験までの時間が限られているとなると、どうしてもネガティブな言葉がけばかりしがちですが、あまりにもネガティブな言葉ばかりかけられているとどんどんと自信を無くしたり勉強のモチベーションが下がったりする原因となってしまいます。
- 本当にちゃんと勉強しているの?なんでできないの?
- ○○ちゃんは○点とってきたって言ってたわよ
- もっと頑張りなさいよ
- 本当にやる気あるの?
- こんなんじゃ○○中学に行けないよ
このような言葉がけは子どもたちを傷つけ、受験勉強をする中でも頑張れなくなる原因です。受験後も長く子どもの中に残ることもあるので気を付けましょう。だからと言って、子どもたちが勉強していない、取り組みが良くないというときに叱るな、というわけではありません。注意すべきときには言葉を選び注意しましょう。
特に成績が悪かったときに落ち込むのは保護者よりも本人です。できなかったのは自分がよくわかっているし、悔しいと思っているのだから、さらに落ち込ませるようなことを言うのではなく「次のチャンスがあるよ!」と励ましたり「つらっかったね」と寄り添ったりすると子どもも次に向けて頑張ろうという気持ちを持つことができます。
合格につなげるために意識したい心がけ
NG行動を理解して、その行動をしないように気を付けるだけでなく、どのような意識を持っておくと良好な親子関係が築ける言葉なのかも知っておくと役立ちます。今回は4つのポイントを紹介しますが、逆に言うとこの4つだけを心がけたら後は本人と塾の先生にすべてお任せすることを心がけましょう。
志望校は本人の意思を尊重
中学受験をすることは保護者が決めることが多いですし、志望校も保護者の意思が強く反映されます。しかし、すべて勝手に決めるのではなく、子どもたちにも主体的に志望校選びに参加させることを心がけましょう。子どもも「自分が行きたい」と思える学校だからこそ、受験勉強を頑張れるようになります。
あらかじめ保護者がある程度志望校を絞って見学させるのも良いですが、小学校低学年で時間に余裕がある時期から志望校探しをするなら、積極的に幅広い学校に足を運ぶ世にしましょう。共学や別学の学校も絞ることなくどちらも見せるようにし、学校も都心にある学校と郊外にある学校など、様々なタイプを見ることで次第に好みが出てくるでしょう。
だんだんと学年が上がってくれば「サッカー部の強い学校に行きたい」とか「お医者さんになるのに有利な学校がいい」とか具体的な希望も出てきます。希望が出てきたら、できるだけ希望をかなえられる学校を出しつつ、保護者の希望と子どもの希望が合致する学校を見つけていきましょう。
志望校を決めるための話し合いも子どもにとっては成長のチャンスです。自分なりに考えてどのような学校に行きたいかという意見を出すこと、見学をして学校の様子を見ることは精神的な成長を促す機会にもなるので、できるだけ早いうちから行動して可能な限り時間を設けるのが望ましいです。
完璧を求めない、逃げ道を作る
誰だって得意不得意がありますし、好不調の波はあります。実際の入試でも100点満点を絶対取らなければならないわけではありません。不得意な科目は合格最低点をしっかりおさえつつ、得意な科目でアドバンテージをとれば合格をすることができます。
そこで、普段の勉強でも何もかもを完璧にこなして良い点を取らなければならないと強く言うことは避けましょう。どうしてもテストで悪い点を取ると不安になってしまうものです。しかし、そこで叱っても何も次につながりません。悪い点を取ったときにもきちんと解きなおしをして理解することができれば得点につながります。
完璧を求めないからと言って普段の勉強をおろそかにして良いわけではありません。逃げ道を作るのはテストの得点や苦手なものであり、毎日のやるべきことや塾の宿題はきちんとやったうえで、できないものは無理強いしない、責めないということが大切です。
常に一番の理解者である
成績が悪いからといって叱っても点数は変わりません。余計に子どもが落ち込んでしまったり、勉強が嫌になってしまったりと逆効果なだけです。得点が悪いことで責められることが続くと子どもは本当のことを言わなくなったり、テストを隠したりするようになり悪循環に陥りやすくなります。
成績が悪かったとしても、叱るのではなくフォローの言葉をかけることを心がけましょう。
- 前回まで苦手な○○はできるようになっているね!
- △△は正答率が低いから、あなただけでなく他の子もできていないから大丈夫
- 難しい問題だったけど、問題用紙真っ黒になるまで解いたのね、頑張ったね
など、ポジティブな評価ができる場所を探して積極的に褒めることを心がけましょう。もしも注意したいことがある場合には、こういったポジティブな声掛けをした後で「ここが変わるともっと良くなるね」という改善提案をするだけでも十分伝わりますし、叱るよりも効果が出やすいです。
中学受験の時期は多感な年ごろであり、学校でも友達関係のトラブルで悩んでいる子も少なくありません。様々な問題を抱えつつも勉強に向かっていることを理解し、誰より子どもに寄り添う存在であることを目指しましょう。
子どもと話がしやすい環境を整えるためにも、週に一度はゆっくりとお茶やおやつを楽しむ時間を設けたり、一緒に散歩をしたりとゆっくり過ごせる時間を作るのがおすすめです。改まって時間をつくらなくても毎週顔を合わせてあれこれ雑談をするだけでも表情や話している内容から今のメンタルの状態も把握しやすく、フォローを入れやすいです。
体調管理を徹底する
中学受験で保護者ができることといえば体調管理です。体調不良を感じたらすぐに対処するのはもちろんのことですが、体調を崩さないために睡眠時間の管理や栄養管理なども心がけるようにしましょう。
特に睡眠時間は学年が上がるにつれて短くなりますし、夜ふかしすることも増えてきます。睡眠時間が少なくなると集中できなくなるほか、自律神経が乱れ精神的にも不安定になる原因です。食欲がなくなることもあるため、睡眠時間を作ることも重要であることを子どもに伝えつつ、できるだけ睡眠時間を確保できる環境を整えるようにします。
塾も追い込みの時期になると遅くまで授業がありますし、やるべきことも多くあるので睡眠時間を確保するのはとても難しいです。そこでせめて睡眠の質を高めることができるよう、夜食は消化の良い食べ物にしたり寝る前に布団を温めておいたりといった工夫をするだけでも熟睡できて疲れも取れやすいです。
食事も塾でお弁当を食べることが増えますが、できるだけ栄養バランスが整った食事が摂れるよう心がけましょう。時間がなくて軽食がいいと言われたときにはいろいろな具材を入れたおにぎりが食べやすく人気です。お弁当が続くとどうしても野菜が不足しやすくなるので、家で食べる食事の際にはお味噌汁やスープ類に野菜をたくさん入れるようにしましょう。体も芯から温まるのでおすすめです。
まとめ
中学受験をするからには成功してほしい、第一志望の学校に合格してほしいと思うのは保護者として当然の思いです。だからこそ厳しいことを言ってしまう場面もありますが、グッとこらえて良い方向に進むために適切な声掛けを心がけることが大切です。
子どもにとって保護者が一番の理解者であることは最大の強みになります。大変な受験勉強だからこそ一緒に乗り越えられるよう寄り添い、本番までに最大限努力できる環境を作っていきましょう。